こんにちは、こんばんは。
カッパ室長です。
今回は月マガ基地で連載中の漫画 KCデラックス『罪と罰のスピカ』第3巻の見どころ紹介や感想を書かせていただきます。
『親愛なる僕へ殺意をこめて』『降り積もれ孤独な死よ』の井龍一先生の最新作です!
※ネタバレを含むのでご注意ください。
第2巻の紹介記事はコチラ↓↓
『罪と罰のスピカ』
原作:井龍一
漫画:瀬尾知汐
第3巻の見どころ(ネタバレ注意)
ボケてしまった殺人鬼おじいちゃんに再び“殺意”を!?
タクシードライバーの矢崎吾郎は子沢山で幸せな家庭を持ちながら、趣味として乗客を殺し続けていた。
幼い頃、車に乗ると性格が豹変する父親から虐待を受けていた矢崎はそのせいで自分もハンドルを握ると殺人衝動が湧いてしまうようになったと言う。
そして後腐れのなさそうな客を捕まえては睡眠薬で眠らせて廃工場に連れて行き、車で引き摺り回して殺していたのだ。
そんな生活を15年も続けるが、時代の変化と共に矢崎の殺人欲も減退していく。
定年と共に殺人から足を洗った矢崎は捕まることもなく、孫もできて幸せな人生を全うできると思った。
そんな時、都麦澄光が矢崎と出会い、彼が殺人鬼であることに気づいてしまう。
しかし、矢崎はすでにボケ始めていて自分の犯した罪を忘れてしまっていた。
罪を逃れた殺人犯を捕まえて罰を与えるのがスピカの“掟”。
スピカは矢崎に罰を与えるために、矢崎の中に眠る“殺意”を呼び戻させようとして…
『罪と罰のスピカ』第3巻 P68,69より感想(ネタバレ注意)
第3巻は“名もなき殺意”編。
スピカが元殺人鬼の老人に罪を認めさせて、罰を与えるお話が描かれました。
第2巻のラストで矢崎吾郎が客を捕らえて不気味な笑みを見せるシーンで終わり、今回はその客を引き摺り回して殺すところから始まりました。
惨い殺し方するなぁと思って読んでいたら、実はこれは過去のお話だったことが明らかになります。
前回、客の方が殺人犯だと思ったら実はタクシードライバーの方が殺人犯でしたという展開に驚かされましたが、今回も意外な展開に驚かされましたね。
矢崎は15年もの間、家では良いパパを演じ、外では殺人鬼という生活を続けるというかなりヤバい人間でした。
殺した人間を写真に撮り、それを見ながら晩酌してるの怖すぎですね。
スピカが矢崎に出会ったのは彼が年老いてボケてしまってからでした。
スピカには「罪を逃れた殺人犯を捕まえて罰を与える」という自分で決めた“掟”があるため、矢崎に自分の犯した罪を認めさせるために色々なことを試していきます。
矢崎の心を読んで彼がが虐待を受けていたことを話したり、人を殺していたことを話してみたり、殺人衝動を取り戻させるためにハンドルを握らせてみたり。
矢崎を罰するためにわざわざ介護ボランティアにまで入っててやる気が凄いですよね。
それでも矢崎の“心の証言”はとれず。
苦戦するスピカを助けてくれたのは、まさかのクラスメイトの十秤天真。
連続殺人犯が人を殺す理由を突き止めるには「殺人の“署名”を探す」と天真はスピカに助言します。
“署名”とはその犯人特有の犯行のパターンや傾向のことで、“署名”には犯人の心の内側にある欲求が何かしら形になったものなんだそうです。
さすが“シリアルキラーに自信ニキ”の天真、自分で殺人はできないけどメチャクチャ役に立つアドバイスをくれますね。
これによってスピカは矢崎が殺してきた人間の特徴や殺害方法、矢崎の母親が死亡した事件について調べていき、矢崎の“殺人の署名”を見つけ出します。
実は矢崎の殺人のトリガーはハンドルではなく“黒電話”だったのです。
これは母親が黒電話のコードで首を絞められて殺されたトラウマからくるものでした。
タクシーの無線も黒電話みたいだったからそれがトリガーになっていたのか。
矢崎の殺人衝動が減退したのは時代が進み黒電話やタクシーの無線が無くなっていったからだったんですね。
そういえば矢崎の奥さんが黒電話を買い替えようと話していたり、次の話の最初で新しくなった電話が描かれていたけど、それは黒電話がトリガーだと示唆していたようです。
父親が車に乗ると性格が豹変する話だったり、殺し方も車で引き摺り回すもので、やたらと車のことを多く描かれていたため黒電話のことなんて全然頭にありませんでした。
車がミスリードだったと知った時は「また作者にやられた」と思っちゃいましたね。
スピカによって自分の殺人衝動について理解した矢崎。
ボケてた時と心の中が違い過ぎますね。
そしてスピカは心置きなく矢崎を殺すことに成功するのでした。
と、ここでお話は一件落着かと思いきや、まだ続きがありました。
矢崎が家の敷地内に埋めて隠していた殺人の写真を回収に行ったスピカの前に矢崎の奥さんが現れます。
『罪と罰のスピカ』第3巻 P129,130より暗闇から急に出てきたからホラーみたいでマジで怖かったです。
彼女は昔から矢崎が人を殺していたことを知っていて、それをずっと隠していました。
それは自分の家族を守るため。
身内に殺人犯がいると世間に知られたら家族にも誹謗中傷が起きてしまうと考えたようです。
死んだ人たちよりも今生きている自分の周りの人間のことを優先してしまったんですね。
奥さんは事実を知ってしまったスピカを殺そうとしますが、彼女の言い分を聞いたスピカの「吾郎さんに殺された人たちにも罪はないですよね?殺された人たちにも家族はいますよ?」という言葉を聞いて殺すことを止め泣き崩れていました。
今回の事件、一番辛かったのはずっと矢崎の犯行を見て見ぬふりをしていた奥さんだったのかもしれませんね。
病室の花瓶の枯れた花からの予想ですが、奥さんは家族のことを大事に思っていましたが夫には早く死んでほしかったのかも…
第3巻のラストではストーリーに大きく関わってきそうな新キャラが登場しました。
それはG県天の川警察署の専従捜査室で働く南爪久郎という男性。
『罪と罰のスピカ』第3巻 P156,157より彼はそこで未解決事件の専従捜査及びデータ入力をしていました。
もともと彼はキャリア組で優秀な刑事でしたが捜査で何かやらかしたらしく、この場所に追いやられているそうです。
一体何をしたのでしょうね?
そして南爪のもとに未解決事件としてスピカが起こした事件たちの資料や大隈が死に際に残したメモが届きます。
南爪はメモに残された「ツムギ」というワードと羽鳥のクラスの座席表でスピカのことを見つけていたし、これは後々南爪がスピカの正体に気づいて追い詰めていく展開とかが考えられそうですね。
また南爪は天真の叔父だということも判明。
これはスピカと南爪のどちらとも仲が良い天真が今後より重要なキャラになっていきそうな予感がしますね。
単行本第4巻は2025年9月頃発売予定です。
井龍一先生の他の作品紹介
『降り積もれ孤独な死よ』
富字山南警察署の刑事・冴木仁は空き巣の通報を受けて、とある屋敷へ。
ところが、調べを進めていく中で、衝撃の事実が判明。
捜査陣に戦慄が走る。
血塗られた狂気と対峙する刑事を描く、激情と慟哭のノワールサスペンス、開幕。


