みなさんは自分の寿命に値段が付くならいくらぐらいだと思いますか?
今回は人生に絶望し、寿命の大半を売り払った青年とその青年を監視する女性との恋の物語です。
『寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。』
原作:三秋 縋
漫画:田口囁一
全3巻
この漫画は小説『三日間の幸福』をコミカライズした作品となっています。
どんな内容?
毎日を無気力に過ごしていた青年クスノキは、お金に困っていました。
冷蔵庫の中は空っぽ。
財布の中にもお金はなく、パソコンもテレビもないクスノキの部屋でお金になりそうなものは中古で買ったCDと本ぐらいです。
クスノキは古本屋で本を売ると、店主から奇妙な話を聞かされます。
「寿命を売る気はねぇか?」
店主の話ではこの近くのビルの四階に寿命の買い取りを行う店があるとのこと。
人によって買い取り価格は異なり、”今後どれだけ充実した人生を送るはずだったか”によってその価値が大きく変動するといいます。
そんな都合のいい話があるわけないじゃないかと思ていたクスノキでしたが、CDを売りに行った店の店員からも同じ話を聞かされます。
そしてその店員は実際に寿命を売ったと言います。
貧乏人をからかっているのかと不審に思いながらもクスノキは二人に教えてもらったビルの場所へ行くことにします。
そこには女性の店員がいて、クスノキはさっそく寿命を売ることに。
サラリーマンの生涯賃金が一億から三億円だから寿命のほとんどを売ればそのくらいになるだろうとクスノキは予想しましたが、結果は大きく外れて…
クスノキの寿命は30万円にしかならなかったのです。
クスノキの残りの人生は幸せになることもできず、社会貢献もできないため、一年あたり最低買取価格の1万円と査定されてしまいます。
この結果にショックを受けつつもクスノキは寿命を三ヶ月分残して残り三十年すべて売り払ってしまいます。
翌日、クスノキの監視をするため昨日の店の店員・ミヤギが訪れ、ミヤギとともにクスノキは人生最後の三ヶ月をスタートします。
ここが魅力的!
まずこの漫画のタイトルのインパクトが凄いですね。あと長い…
内容は美しく儚いラブストーリーです。
主人公のクスノキは自意識だけ高く他人と関わろうとしないダメ人間です。
そんなクスノキが寿命を売り、監視員のミヤギと3ヶ月共同生活をすることになります。
クスノキは残りの人生でやりたいことを書き出し、実行するのですがその結果がまた残酷なものなんです。
せめて残りの少ない人生で幸せを掴もうとするクスノキとそんなクスノキに淡々と「起こるはずだった未来」を語るミヤギ。
そんなクスノキとミヤギですが物語の中盤あたりに起こる出来事をきっかけに二人の距離が徐々に縮まっていくのです。
ここからが本当に面白くて、二人の関係がいいなと思います。
そしてクスノキも「せめて彼女にとって一番傍にいて楽だった監視対象者と記録されよう」と思い始めます。
ダメ人間だったクスノキがミヤギのために徐々に良い人間に変わっていこうとする姿にグッときます。
なんといってもラストの終わり方が本当に好きです。
最高のハッピーエンドかと尋ねられるとそうではないかもしれませんが、二人が幸せになってくれて本当に良かったと思えるような終わり方をしていて、読み終わった後は感動に浸れると思います。
原作者の三秋縋さんはこの作品を「無性に死にたい夏にどうぞ」と紹介しています。
かなりインパクトが強い紹介です。
みんなが楽しくて浮かれる夏の季節でも死にたくなるような人に是非読んでほしいですね。
これを読んでちょっとでも幸せを感じてもらえればいいなと思います。
もうすぐやってくる死にたくなるような夏の季節に備えてこの漫画を読んでみてはいかがでしょう。
全3巻と短めなのでとても読みやすいですよ。
原作の小説『三日間の幸福』を未読の方は是非とも小説の方も読んでみてください。
読めば漫画をより楽しむことができると思いますよ。
他の三秋縋さん原作の作品はこちら↓↓
おわり