本日は2人の子供が貧民から大富豪へと一発逆転を狙う冒険譚を紹介します。
『片喰と黄金』(北野詠一)
どんな内容?
1849年1月
アイルランドは未曽有の大飢饉のさ中にありました。
原因はジャガイモの疫病。
元々貧しくジャガイモが主食だったアイルランドでは餓死者と免疫力不足による病死者が何十万人と出ました。
その日の食事もままならない、当然、地代など払えるはずもなく多くの農夫が土地を追い出されました。
小さな農場を営んでいたアメリアの家も例に漏れず立ち退きになり、生き残った14歳の少女・アメリアとその従僕・コナーは浮浪児となり、毎日死体漁りをして暮らしていました。
仕事もない、土地もない、救貧院はいつ空きが出るかわからないという状況でもアメリアは希望を捨てませんでした。
彼女はカリフォルニアでのゴールドラッシュの噂を聞き、アメリカ合衆国に移民し、黄金でひと山当て、一発逆転の大富豪になるという野望を抱いているのでした。
ある日、いつものように死体漁りをしていたアメリアとコナーはある男性と出会います。
その男性はアメリアが自分の亡くなった娘に似ていることから移民などやめて一緒に暮らさないかと提案します。
しかし、アメリアにはそんなささやかな幸せは要らなかったのです。
3年前、飢饉で何も食べるものがなくなったアメリアはいつか必ず救われるという希望を持って暮らしていましたが、空腹で倒れてしまいます。
そんな時、コナーの弟が自ら犠牲となってアメリアへの糧となり、アメリアの命は救われました。
それを知ったアメリアは決意したのでした。
「大富豪です。飢えも知らない、病気も知らない、子供も孫もその先もずっとなんの苦労も要らないような大富豪になるために、黄金を掴みに行きます。」
アメリアの強い意志に心を打たれた男性は、アメリカへの渡航費を出し、アメリアとコナーを送り出すことにします。
そしてアメリアとコナーは大富豪になるためにカリフォルニアへ向け旅を始めるのでした。
ここが魅力的!
貧しい浮浪児の2人が人生逆転を狙ってカリフォルニアを目指す物語です。
私は「ゴールドラッシュ」という言葉は世界史の授業で習いました。
世界史でこの時代について勉強したことがある人はこの物語をより楽しむことができるのではないでしょうか。
物語は大飢饉のさ中にあるアイルランドから始まります。
知り合った男性からアメリカまでの渡航費を出してもらい、アメリカへ向けて旅立つ2人。
しかし移民船は「棺桶船」と呼ばれ、一か月以上も劣悪な環境の船の中で暮らすことになります。
そのため、移民しようとしている人たちの半分は船の中で死んでしまうのです。
そんな重たいストーリーですが、アメリアの希望にあふれた目にとても勇気をもらうことができます。
アメリアを見ていると自分もどんなに辛くてもいつかは一発逆転の大富豪になってやろうという夢を見たくなりますね。
1巻では2人は棺桶船でたくさんの悲しい出来事を経験し、ニューヨークに降り立ちます。
目的地のカリフォルニアはまだまだ先です。
この先、2人にどんな困難が待ち受けているのでしょうか。
おわり