本日は「他人だけど家族」がキーワードの漫画を紹介します。
『兄の嫁と暮らしています。』(くずしろ)
どんな内容?
女子高生の岸辺志乃は昔に交通事故で両親を亡くし、兄の大志と二人で暮らしていました。
しかし、兄も半年前に風をこじらせて亡くなってしまい、天涯孤独となってしまいます。
ですが現在、志乃が家に帰ると「おかえり」と迎えてくれる人がいるのです。
その人は兄のお嫁さんの希さんです。
大志が亡くなってから、志乃と希さんは二人で暮らすようになったのです。
お互い大切な人を失い、心に大きな傷を持つ志乃と希さん。
二人とも不器用で互いに気を遣いながら生活することもあるけれど、一人じゃなく、誰かと一緒にいることの心地よさや安心感を感じ、二人で幸せを見つけていきます。
両親を亡くし、半年前に兄も亡くなってしまった少女と兄の嫁との日常センシティブストーリーです。
ここが魅力的!
私は初め、この漫画は百合漫画かなと思っていました。
しかし、内容は今のところそこまで百合という感じではありません。
「家族愛」という方が強い作品です。
もともと血のつながりのない他人の二人が突然二人暮らしをするようになり、戸惑いながらも二人で幸せを探しながら過ごしていく物語です。
お互い大切な人を失ったという切なさや人の温かさ感じさせてくれます。
初めから重めの設定で始まりますが、思ったほど重い雰囲気にならずに物語が進むのは志乃の明るく楽しい学校生活や希さんの優しくて天然な部分が随所に見受けられるからだと思います。
希さんが無意識に大志との惚気話をしているときは可愛くてニヤニヤもできちゃいます。
でも二人の生活は楽しいことばかりでもなく、志乃は希さんにこれ以上迷惑をかけないように気を遣い、希さんはもっと志乃に頼ってもらいたいけど上手くいかず、お互い微妙な距離感なんです。
「他人だけど家族」な状態から二人でゆっくりと距離を縮めていき、本当の家族になろうとする光景は心が温かくなります。
志乃は希さんが大志のせいで縛られているのではないか、もっと自由になってほしいという気持ちもあるのですが、自分を一人にしないでほしいという思いもあって悩みます。
希さんは志乃の側にいてあげなくちゃという使命感もあるのですが、それ以上に志乃を通じて大志のことを感じていたいという思いが強いようです。
お互いが自分の気持ちにしっかり向き合って、そして二人で話し合い仲を深め合い、本当の家族になり幸せになってほしいと思います。
重めの設定ですが、そう感じさせない工夫が多くみられ、とても読みやすいです。
絵が優しいタッチで描かれていて、キャラクターも表情豊かなので気持ちがグッと伝わってきます。
二人がこれから少しずつ本当の家族になっていくのを温かく見守りたくなる作品です。
おわり