本日は大人な恋愛漫画を紹介します。
『夏の前日』(吉田基己)
全5巻
どんな内容?
日吉ヶ丘芸術大学の4年生の青木哲生はバイト先のひので画材で藍沢昌と出会います。
昌は月下画廊の店長で和服の似合う美人のお姉さん。
その日は店のチラシを配りにきていました。
後日、昌はたまたま河原で絵を描く哲生の姿を見かけます。
そして「見てていーい?」と尋ね、ずっと後ろで座りながら哲生が絵を描く姿を見ていました。
哲生は絵を描く才能はあるが人付き合いが苦手なのでそっけない態度をとってしまいます。
それでも昌は何も言わずただ毎日哲生が絵を描く姿を見に来るようになりました。
しかし、絵が完成すると自然と二人は会うことがなくなりました。
ある日哲生は学校で作品の展示スタッフに駆り出されると、そこで昌と再会します。
年下をからかうような昌の態度にイラつく哲生。
しかしある雨の日、昌が哲生のバイト先に傘を忘れていったことを聞くと哲生は雨に打たれびしょ濡れになりながら昌の店まで傘を届けに行きます。
なぜ傘を使わないのかと昌が尋ねると、「俺のじゃないから」といって帰ろうとする哲生。
そんな哲生に昌はキスをして引き留め、自宅に連れ帰り、二人は一夜を共に過ごします。
昌にはっきり好きとも付き合おうとも言わず、今の関係に疑問を持ちつつもデートをしたり体を重ねたりして少しづつ距離が縮まっていきます。
しかし、哲生は同じ大学でよく見かける女性「はなみ」に徐々に心を奪われていくのでした…
ここが魅力的!
この作品『夏の前日』は作者の前作『水の色 銀の月』の前日譚となっています。
それを知っていると哲生は誰を選んだのか予想ができてしまいます。
つまり、この作品で哲生が「はなみ」と付き合うために昌と別れることになるのです。
あらかじめ決められた結末のなかで、どのようにその結末に向かって物語が進んでいくのかを楽しむ作品となっています。
最後に昌が泣き崩れていく姿は本当に悲しくなります。
哲生のため気丈にふるまう昌と別れ、何か吹っ切れた顔をして絵を描く哲生の姿で物語は終わりますが、その後、昌がどうなったのかがとても気になります。
昌には本当に幸せになってほしいです。
私は最終巻を読み終わって「なんでこんなに良いお姉さんを振るんだよ哲生!」という思いでいっぱいでした。
哲生は本当に昌のことを愛していました。
でも哲生にははなみの存在のほうが重要だったということでしょう。
哲生を支えてくれていたのは昌かもしれません。
しかし、今まで描けなかった「人物の顔」を描けるようになったきっかけをくれたのは確かにはなみでした。
芸術家としての哲生がどちらが自分に必要な人物なのかを考えだした結果がこれなんですよね。
昭和のノスタルジックな感じが漂う絵と人物の表情がとてもきれいに描かれていて物語に引き込まれます。
バッドエンドで終わるような形ではありますが、とても感動する作品です。
全5巻と短めで読みやすいのでオススメですよ。
『夏の前日』のその後が気になる人はこの作品をチェック↓↓
おわり